




私たちは、日本のメガシティを対象に、その膨大な都市空間を「部分」から読み解く研究を進めています。大きな生き物を解剖し、各部位を丁寧に観察するように、都市の空間構造や生成過程を分析する試みです。
これまでの研究では、特に第二次世界大戦後の東京に注目し、闇市として機能した場所がいかに形成され、どのように変容していったのかを明らかにしてきました。今後は大阪をはじめとする他の大都市にも対象を広げ、日本におけるメガシティの姿をより多角的に捉えていきます。





1905年に来日した建築家ウィリアム・メレル・ヴォーリズ(1880–1964)は、関西学院大学西宮上ケ原キャンパスをはじめ、関西を中心に数多くの建物を設計しました。これまでヴォーリズ建築は、「名建築」として質の高さに注目されてきましたが、本プロジェクトではその「量」にも目を向けます。ヴォーリズは生涯で約1,800棟を手がけており、私たちは名品主義・優品主義とは異なる視点から彼の活動を再考します。
現在は、ヴォーリズの和風建築への関心、戦後都市計画との関わり、さらに東アジアにおける展開に着目して研究を進めています。また並行して、戦中期の金属供出によって失われた関西学院大学西宮上ケ原キャンパスの装飾(アイアンワーク)を、模型によって復元するプロジェクトにも取り組んでいます。
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戦後日本において、岐阜駅前の繊維問屋街は東京・大阪に匹敵する既製服産地として大きな発展を遂げました。とりわけ高度経済成長期以前に早くから産業化が進んだことで、大企業による大規模工場生産ではなく、家庭での内職や家族経営の製造・卸売業者を中心に産業空間が形成された点に特徴があります。
私たちはこうした視点から都市史・建築史研究をするだけでなく、まち歩きツアー、建物公開イベント、問屋街でのトークライブや展覧会などを通じて、地域と実際に関わりながら調査・発信を続けています。
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海や河川など「水際」に形成された居住環境を、地形や災害との関係から読み解く研究を進めています。これまでには、三陸沿岸集落の形成過程と津波との関わり、瀬戸内海における水上生活者の「陸上がり集落」の形成史などを取り上げてきました。
民俗学・文化人類学・地理学など隣接分野の研究者と協働し、フィールドワークを通じて地域社会と向き合いながら研究を深めています。
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これまで私は、戦後日本の大都市形成を読み解くうえで、闇市の形成と整理の過程に注目してきました。しかし視野を広げると、それは冷戦期東アジアにおける大規模な人口移動を契機とした、仮設的な都市空間の形成ともつながっていることが見えてきます。
現在は、台湾や韓国の大都市を対象に、日本植民地期から冷戦期までの人口移動を背景とした都市形成過程を研究しています。日本植民地期に築かれた建築的・都市的環境が、大規模な人口移動を経て、第二次世界大戦後にどのように変容したのか。こうした問いを通じて、ポストコロニアル都市形成史の可能性を探っています。